司書が司書に取材した③ 「貸出ベスト100」ができるまで。――中央図書館開館15周年企画の裏側
2021(令和3)年7月1日、稲城市立中央図書館は開館15周年を迎えました。これを機に、各担当により様々な企画が同時進行しています。
その裏側を探りたい!ということで、各担当の企画にかける思いを取材していきます。今回は、「よむよむ島」特集展示と並行して行われている「15周年貸出ベスト100」。中央図書館の15年分の総合貸出ランキングです。展示を準備する貸出促進班の5人の頭の中には様々なアイデア、そして奮闘が渦巻いていました。
「アイデアノート」の存在
なぜこの企画を立てたのかを取材したところ、主に以下2点の考えが基となっていました。
①図書館サービスにおいて「貸出」はとても大切なもの
②アイデアを増幅する「アイデアノート」があった
①貸出は図書館にとって大切なサービス。貸出数は人気のバロメーター。利用者の知りたい情報でもあり、TVや新聞でも人気の本のランキングをよく見かけます。担当いわく、「コロナ禍が長期化して図書館に長期滞在できない中、そこに貸出ベスト100の本が並んでいたらパッと見てすぐ借りられる。わかりやすい選択肢になるのでは。」とのこと。この制限下の中で変化した利用者の「本の選び方」に着目しているとは!
現在、コロナ感染対策のために閲覧や自習用に使えなくなったスペースを、中央図書館では展示スペースとして活用中。視点の鋭さに恐れ入りました。
②「アイデアノート?」ということで、見せてもらいました。普通のA4サイズのファイル兼ノートで、表紙にドンッと「できる、できないは考えず、自由に書いてください」と書かれています。内容はササッと走り書きしたメモ、メモ、メモ。面白そうな案には矢印がついてコメント。例えば、「図書館のおススメ作家」という仮案に対しては「図書館担当の部分をレファレンス主任とか役職名で出したらどうでしょう?」とアイデアが更に広がり、案が成長していく様がうかがえます。
取材をする中で見えてきたのは、企画について「できるものはどんどんやる」というスタンス。「案が出たら、具体的にどうすれば実現できるか、ああすれば、こうやればできるのではとみんなで考えます。」とのこと。
社会生活の中で自分の意見が尊重され、実現していくこの過程。一見普通のようで、実はなかなか難しいことでは?新しくメンバーに入った担当も驚いた様子でした。「もう少し展示を派手にできたらいいのかな…とほんの一言提案したものが、自分が出勤していない日に他の人がそれを形にしてくれたことが嬉しかったです。」
ほんの一言が形になる。貸出促進班メンバーのあたたかな心と実践力の高さを感じました。
垣間見えた担当たちの奮闘劇(?)
作業をしながら、当時のいろいろなことを思い出していたというあるベテラン担当。「村上春樹さんの作品は、発売した途端に予約が殺到してすごかったんです。他には、宮部みゆきさんの新刊の初版に乱丁があって。すでに貸し出されていたものもあったので、あわてて回収しに行かなくてはならなかったり。いろいろありました。」そう言って笑いながら遠い目になるベテラン担当(笑)大変だったようです、お疲れ様でした。
資料収集のために常に目を光らせていた、ある担当。「リストを見たら、やはり上位は人気本。本がすぐ回収できるように、ある時期は返却カウンターに立つと虎視眈々と本を狙っていました。」虎視眈々というフレーズを特に力を入れてのコメント(笑)こちらも大変だったようです、お疲れさまでした。
大変大変、と取材をしてよく聞きましたが、着実に作業をすすめている担当たちの姿から「大変さ」が感じられないのが、実は見ていて感じたところ。実際、ベテラン担当は「テーマが決まってしまえば大丈夫」と話され、別の担当から「楽しいですよ!」との声が上がり、「大変なんです」と言いながら、パソコンをパチパチと打ち、どんどん作業をこなし、てきぱきと展示をしていく姿を見ていると…。
大変らしいが、動きがなめらか。そんな印象を貸出促進班のメンバーから感じている今日この頃です。
中央図書館に関わるみんなで作った「貸出ベスト100」
ちなみに中央図書館貸出ベスト3の作品は次の通り。
第1位 『コンビニ人間』村田 沙耶香 利用回数339回
第2位 『ラプラスの魔女』東野 圭吾 利用回数315回
第3位 『人魚の眠る家』東野 圭吾 利用回数314回
予想とは少し異なっていたこの結果に、担当も驚いたようです。
本屋さんなどでも売り上げベスト100はよく見られる光景。しかし、ここでの「100」は特別なもの。なぜなら中央図書館の利用者みんなで作りだした、ここでしか見られないものだからです。
「図書館の利用者全員の15年間の貸出の積み重ねから出来た貸出ベスト100。長い年月の中で作られた意味のある数字なんだと思うと感動します!」担当のこんなあたたかい話を聞いたあとに展示の前に立つと、なにか胸にじんわりとこみあげてくるものがあります。
図書館に関わるみんなで作り出した貸出ベスト100。とくとお楽しみください。
(稲城市立中央図書館開館15周年記念事業 プレス班)
稲城市立中央図書館 開館15周年記念事業
稲城市立中央図書館は2021(令和3)年7月1日に開館15周年を迎えます。
これを記念に、さまざまな企画を開催していきます。
図書館ホームページでは、特設ページをご用意し、15周年記念事業について随時お知らせしております。