本好きの語らい、はじまる。――中央図書館開館15周年企画の裏側
ついにビブリオバトル当日を迎えました。
私(筆者)は観覧のみの募集枠として参加し、事前のイベント班内の話し合いでは緊張した空気を肌で感じておりました。
迎える本番、はじまるバトル。そして感じたことは次のとおり。
……緊張は、いらなかった。
そう、終始ほっこりなごやか。ビブリオバトルならぬビブリオ好きの対談といってもいいでしょうか。このままもうちょっと好きな本について語らいませんか、と思わず言いたくなるような、和やかな空気が流れていました。
茶の間バトル
参加者は6名と見学者が2名。初心者からビブリオバトル推進委員の方までで、高校3年生からご年配の方と、幅広い世代の方が参加してくださいました。バトル、という名のもとに集まっているのに、あるのは穏やかな空気。一瞬自分が茶の間にいるような錯覚を覚えたほどでした。でも、決してゆるいわけではない。話もまとめるところはまとめて、キュッとした引き締め感もある、ゆるさと引き締めがちょうどいい案配でした。
私自身がビブリオバトルを初めて見たのは、YouTubeに上がっていたある高校生たちの対決。コロナ禍以前のものだったため、どこかのホールを使った有観客のもの。画面上からも高校生たちの緊張する様子が伝わってきました。
きっと今回の皆さんも緊張して臨むものと思いきや、上記でも述べた通り、それがほぼ無い。むしろ皆さんが自分の好きなところ、好きな空間に囲まれているためか、変に肩に力が入っておらず「そのままの個人」の姿があり、発表ではなく「会話」をしているようでした。
そのためか質問タイムもパッパッと手が上がる。人がたくさんいて恥ずかしいから質問はいいや……が、無い。気負いなく質問して話すことができるこの環境。よかったですよ。
「緊張してます」に向けられる暖かいまなざし
今回ほぼ初めての参戦が2名。緊張している様子が少しは見えたものの、画面に見えるのは、ベテランの方たちの穏やかにじっくり聞く表情。
見学している側としては、この聞き手の表情もじっくり見られるのが新鮮でした。一人が発表している間に聞き手である参加者ひとりひとりのお顔が見られるのは、なかなか見えない視点。オンラインならではの利点が活かされている気がしました。
そのためか質問する雰囲気も、「会場の前で発表しているあなた」でなく、まるで面と向かって話しているような力みを感じさせないもの。「肩肘張らなくても、大丈夫だよ」と、聞き手皆さんの優しい言葉が聞こえてくるようでした。
「1票も入らなかったけど、でも読んでほしい!」
これは今回参加してくださったバトラーのお言葉。
この度、チャンプ本は2冊、勝者は2人となりました。会の終わりにバトラー全員が一言ずつ感想を話す段にあたり、戦いに敗れたおひとりが残した言葉です。胸にグッときました。
票が入ろうが入らなかろうが、「読んでほしい」と自信を持って言えること、またこれこそがビブリオバトルに参加するすべての人の思いではと感じ入りました。私は投票権を持っていませんでしたが、この言葉で1票投じたくなりました(笑)
実際、参加者は日本各地のバラバラな場所にいるのに、Zoomを通すだけでまるで同じ空間にいるような不思議な感覚があり、全員がじっくり耳を傾け、目の前にいるかのように言葉を交わす面白さ。実際に会えないにも関わらず、予想以上に楽しめる意外さがありました。
Zoomビブリオバトル、侮れません。
(稲城市立中央図書館開館15周年記念事業 プレス班)