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開催しました! 柳瀬博一氏による一般講演会 「『国道16号線』と多摩の未来」 ――中央図書館開館15周年企画⑦

2021年7月1日に迎えた、中央図書館開館15周年。この記念事業のひとつとして、今回は「イベント班」より、2022年1月9日(日)に開催された「『国道16号線』と多摩の未来」について、熱いレポートをお届けします。

こんにちは。
稲城市立中央図書館開館15周年企画「イベント班」です。

1月9日(日)、『国道16号線-「日本」を創った道-』の著者であり、ジャーナリストとしても広くご活躍中の柳瀬博一氏を講師にお迎えし、著書を出発点としながら、多摩地域・稲城市に話題を広げてお話しいただく「『国道16号線』と多摩の未来」を開催いたしました。

R3一般講演会ポスター

今回は講演会の報告とともに、講演会の舞台裏を公開します。
このnote記事の最後では、現在募集中の講義+文章ワークによるプログラム、「文章が変われば世界が変わる! 相手を本気にさせる文章教室」のご案内もいたします。こちらもお見逃しなく!


1. 講演会、はたして今年度できるの?

中央図書館で開館15周年記念企画の取組みが始まったのは、東京都に出されていた緊急事態宣言がいつ解除されるか見通しの立たない4月、本来ならば開館15周年の目玉企画となる、一度にたくさんの人に集まっていただく講演会など、安心・安全に開催できるか???不安いっぱいの中、企画準備が始動しました。

なんといっても、今年度は中央図書館開館15周年、さらに稲城村として明治22年に誕生した稲城市制が施行されて50周年の大きな節目の年でもありました。二重にアニバーサリーなのです。

2. 作家の方による講演会にしたい!からの、柳瀬博一氏との出会い

―――記念イヤーにふさわしい、ってどんな講演会?

以前から図書館の定例行事である一般講演会後のアンケートで、今後への要望が多かったのは、以下の2つでした。

① 作家の方による講演会
② この地域をより深く知ることができる講演会

そこで、この2つの要望のどちらか、もしくは2つとも!満たしてくださる作家の方に依頼してみようということになりました。
この地域出身やゆかりのある作家、もしくはこの地域が舞台となる著作の作家の方…すぐに大変著名な方が何人も浮かびます。

ここでいくつか問題点も考慮しておかなければなりません。講演会会場となる、通常定員50人の城山体験館視聴覚室は、非常事態宣言下では14人まで、非常事態宣言が出ていなくても27人が最大と収容人数が制限されていました。一人でも多くの方にご参加いただくためには、感染者の拡大が収まる時期を待たねばなりません。

また、残念ながらこのまま感染拡大が収まらないかもしれない、そういった場合はオンラインでの講演会になることも視野に入れなければならず、柔軟に対応いただける作家の方に初めからアプローチしておく必要があるのだろうと考えました。
―――そんな方が見つかるの?

ワクチン接種が進み、緊急事態宣言も解除された10月、さあ今だ!となっても、どなたにアプローチしてよいものやらと苦慮しているとき、ふと「『国道16号線』の著者、柳瀬博一氏はどう?」あるスタッフが思い出したように言いました。以前、稲城市立図書館のtwitterに柳瀬氏がretweetしてくださったことに強く感銘したスタッフでした。

早速、柳瀬博一氏に講演会依頼のメールを送ったところ、なんたる奇跡!その日のうちに柳瀬氏より承諾のお返事を頂けたのです!!

稲城市立中央図書館では、毎月「ベスト予約」と題し、その前の月に予約が多かった資料を集計し、分類ごとに順位をつけて書架に掲示すると同時にtwitterなどのSNSでも発信する取り組みを行っています。

2020年11月に出版された柳瀬博一氏の著書『国道16号線 「日本」を創った道』は稲城市立図書館でも関心を集め、翌年1月の月間ベスト予約「産業‘600’」の部で1位、翌2月は2位となりました。この時の「ベスト予約」発表のtwitterにいち早くretweetして下さったのが柳瀬先生だったのです。

retweetくださったといううれしい話題は当時スタッフ間でももちきりとなったものでした。同時に、第一線で活躍されている方の行動力やアンテナの鋭さを知ることになりました

たったそれだけの、こちらが一方的に盛り上がっていただけのご縁にすがっての講演会依頼でしたが、こうして、一般講演会の準備は急速に始動したのでした。そして、翌週の10月の下旬には下見と打ち合わせを兼ねて柳瀬氏が稲城市立中央図書館へご来館くださいました。

なんと、その打ち合わせの日、対応したスタッフは柳瀬氏から3時間以上にも及ぶ『国道16号線』のお話を伺うという幸運に恵まれました(役得です!)。

もちろん、予め著書は拝読していましたが、柳瀬氏の話の分かりやすいこと、話題が多岐にわたること!現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院で教授をされている柳瀬氏、雑誌記者・単行本の編集者はたまたラジオのパーソナリティまでお勤めの経歴があり、著名な作家との交流だけでなく、様々な現場の取材を通して独自の視点をお持ちで、その豊富な経験と博識といったら!いったい頭の中にいくつ引き出しがあるのか、時間がたつのを忘れてどんどんお話に引き込まれてしまったのでした。きっとこの講演会は素晴らしいものになると確信したのは言うまでもありません。

3.講演会「『国道16号線』と多摩の未来」へ向けて

国道16号線は稲城市から見ると遠くはないけれど、市民が頻繁に利用するほど近くの道路でもないこと。また、都心に通勤するサラリーマンが多いため、稲城市よりも郊外にある国道16号線地域に関心を持っていただけるか、正直少し心配がありました。

このことを打ち合わせの際に率直に柳瀬氏に話させていただくと、次のようにありがたいご提案をいただきました。

「稲城市の地形はまさに国道16号線沿線に共通しており、国道16号線を話すことはまさに稲城を話すことにもなる、郊外のとらえ方もコロナ禍以降変化している。多摩地域の注目ポイントにも触れながら、稲城を含む多摩地域の未来も見据える話をしていければどうでしょう」

そして、講演会の演題は「『国道16号線』と多摩の未来」と決定しました。

『国道16号線』の取材で八王子や橋本方面のことは詳しいが、稲城についてももっと知りたいとのお申し出をくださった柳瀬氏、講演会に向けての勉強資料として、稲城市の地域資料『稲城の地名と旧道』、『写真で見る稲城今昔』をお持ち帰りになりました。

講演会の募集開始を12月1日とし、ポスター作製やホームページでのご案内の準備が着々と進む中、信じられないような素敵なニュースが飛び込んできました。

なんと!募集開始前日11月30日(火)の夜、柳瀬氏がテレビ出演をされたのです。しかも、その番組は人気トークバラエティ「マツコの知らない世界」!

“神奈川、埼玉、東京、千葉を環状に走る国道16号線を愛して止まない
大学教授 柳瀬博一さんがお届けする「国道16号線の世界」“
“太古の昔から現在に至るまで進化を続け、グルメからエンタメまでマツコも驚く国道16号線の最新事情“
番組HPより抜粋)

用意していたポスターに急遽「11月29日、『マツコの知らない世界』にご出演」の文字も入れさせていただきました。
―――このタイミングでテレビ出演されるなんて、宣伝効果絶大!柳瀬先生、神~!

4.そして迎えた講演会

当日、朝9時から車で稲城市中を散策、実際に地形や街の様子をご覧になり、複合施設ふれんど平尾内の稲城市郷土資料室にもお寄りになったという柳瀬氏、郷土資料室に置かれていた「文化財ノート」のパンフレットの山を手にやや興奮気味にお越しになりました。

「いやあ、素晴らしいですね。稲城市の郷土資料室。これだけのパンフレットが作られているということは、この地域にこれだけのしっかりした歴史があることの証ですね」

この地域で司書をしている者にとって、誇らしくうれしくも感じる同時に身の引き締まる思いのするお言葉です。

先生撮影


〈写真〉講演会の朝、中央高速から稲城市向陽台方面を望む(撮影:柳瀬氏) 驚くことに、柳瀬氏は写真にある向陽台のマンション群の名称をすべてそらんじて説明されたのでした


 講演会は柳瀬氏が用意くださったスライド(ほとんどが柳瀬氏が取材で独自に撮られたお写真)を見ながら進められました。冒頭には「マツコの知らない世界」出演時のお写真、「ヘリクツばかり」のテロップ付きのもので、一気に会場が和みました。

一般講演会3

 柳瀬氏は豊富な資料を用意され、国道16号線沿線と稲城市を含む多摩地域を、行きつ戻りつ、地形、時代、カルチャーなど縦横無尽に広い見聞から語ってくださいました。そうした氏の豊富な経験に裏打ちされた知識あふれる語り掛けに場内の雰囲気もボルテージが上がっていき、そこからがあっという間の2時間。

 講演会の最後に、午前中に郷土資料室に立ち寄ったことを披露され、稲城の歴史がつぶさに見られる素晴らしい展示なので、まだご覧になっていない方はぜひ行ってくださいとの力強い言葉で締めくくられたのでした。

 講演会予定終了時間にいったん会は終了したものの興奮冷めやらず、さらに柳瀬氏に質疑応答を願う6人もの方々が会場に残られました。柳瀬氏も快く応じてくださり、座談会のようにざっくばらんにお話をお続けくださいました。そこでは、氏の稲城市の印象から、豊富な緑地をどう有効活用するか、など地域に密着した話題が中心となりました。

<講演会でのお話をちょこっとご紹介>

 舞台となる国道16号線は、関東平野を外周する330㎞、東京~名古屋間を一般道だけで進むとイメージするとその距離感はつかめるだろうか。
国道16号線は遡ること古代から人類が集まり(貝塚が集中して残っている)、近代に至っては飛行場が数多く点在(日米の軍事施設が集中)したことから、戦後は文化(音楽・小説・食…)の発信地となった。現在も各業界に名を馳せる人々がこの地を経由している。現在はショッピングモールなど商業施設が集中しているのが象徴的である。

 近年、テレワークの浸透により、鉄道中心社会(通勤・通学など駅を経由した生活による発展)の流れが変わってきている。家のある地域で過ごす時間が増えたので、地元に付加価値を求めている。通勤路に縛られず家族や仲間と移動できる車社会…駐車場が確保される場所に人が集まる流れがある。

 稲城市は適度な小流域が豊富にあり、平地は少なく谷戸が多い。市内だけで標高差が100m以上あるのは珍しい地形である。居住区のすぐそばに今も自然が残る地形と言える。生活を豊かにする付加価値にあふれている。

 
<参加くださった方々からのご感想(原文ママ)>

・16号線の直接沿線ではないのに稲城市のこともよく調べてお話しくださったことに感動しました。
・単にご著書をなぞるのではなく、稲城と八王子に引き寄せたお話素晴らしいです。
・多摩尾根や米軍施設との関係など、見方が変わりました。
・先生の語りとスライドがメリハリあり、長時間でもまったく飽きることなくお話に引き付けられました。
・16号線は絹の道ぐらいしか知らなかったので一周330kmもある事を知りました。今日聞いた内容を頭に入れつつ、一周してみたいです。
・大学院生です。研究に迷っていたのですが、自分の住む稲城の思わぬ歴史の深さを知りました。

一般講演会7

5.講演会を終えて

 開催した1月9日(日)は新たなコロナウィルス、オミクロン株の急速な流行が懸念され始めた頃でした。会場の換気、マスマスク着用・手指消毒・検温のお願い、距離を置いての着席などたくさんのご協力をいただきました。こうして無事に稲城市立中央図書館開館15周年企画、「『国道16号線』と多摩の未来」の一般講演会が終了できましたのも、柳瀬博一氏と参加くださった22人の出席者の方々のおかげと改めて深く感謝を申し上げます。

 当日の講演会の内容をかいつまんでご紹介しましたが、まだ『国道16号線 「日本」を創った道』(新潮社、2020年)を読まれていない方、ぜひぜひご一読ください。稲城市立図書館でも所蔵があります。国道16号線に視点を当てながら、地政学・文化・歴史など、様々なジャンルの話題にあふれており、知的好奇心が沸き立つこと間違いなしです。また、雑誌『東京人』2022年2月号 (都市出版)特集「東京の環状道路」では、柳瀬氏の鼎談記事が掲載されています。こちらも稲城市立図書館に所蔵がありますので、チェックしてみてください。

6.さらに、開館15周年記念講演会企画第2弾!

講義+文章ワークによるプログラム
文章が変われば世界が変わる! 相手を本気にさせる文章教室
開催のお知らせ

HP用ポスター


まだまだ開館15周年記念講演会企画は続いています。
令和4年3月21日(月・祝)午後1時30分より開演予定のプログラムのご紹介です。

受験や就職を控える方々への応援企画として、読み手の気持ちを動かす文章について実際に書きながら学べるワークショップを開催します。
受験の方法も多様化しています。特に就職では必ずと言ってよいほど自己紹介や自分の強みのアピールを求められます。自分のことを文章で知ってもらうにはどのような文を書くと伝わるか、このチャンスに学んでみませんか。

講師には、昨年『ゼロから始める文章教室 読み手に伝わる、気持ちを動かす!』(ナツメ社)を出版され、文章教室も数多く開かれている小川こころ氏(文筆家、ライター、文章教室講師)をお招きします。

・「自分は何者か?」
・「読む気にさせる”見出し“のひみつ」
・「読み手を5行で説得する方法」
 など

「書くこと・伝えること」が楽しくなり、世界がどんどん広がる文章術を学ぶ、講義+文章ワークによるプログラムです。

中学生以上であればどなたでも応募できます。
お申し込みは中央図書館まで。詳しくはこちら
ご参加をお待ちしています。

<小川こころ氏のプロフィール>
大学卒業後、楽器メーカー勤務を経て、全国紙の教育部門に所属する取材記者として小学生新聞を担当。その後広告会社でコピーライター職を経験し、「文章スタジオ東京青猫ワークス」設立。文筆活動や講師活動に力を注ぐ。「ストアカ/まなびのマーケット」で2019~2021年度の3年連続アワード受賞。累計受講生数3300人超。企業や自治体におけるライティングセミナー実績も多数。2021年秋、『ゼロから始める文章教室 読み手に伝わる、気持ちを動かす!』(ナツメ社)を出版。

(稲城市立中央図書館開館15周年記念事業 プレス班)

稲城市立中央図書館 開館15周年記念事業
稲城市立中央図書館は2021(令和3)年7月1日に開館15周年を迎えます。
これを記念に、さまざまな企画を開催していきます。
図書館ホームページでは、特設ページをご用意し、15周年記念事業について随時お知らせしております。