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スタッフおすすめ本『月の名前』

今回のおすすめ本は、『月の名前』です。

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タイトル:『月の名前』
著者:高橋順子/文 佐藤秀明/写真
資料コード:611553928(中央)、510554024(iプラザ)
請求記号:446/タ

「月が綺麗ですね。」

かの夏目漱石が英語教師時代、
“I love you”を「我君を愛す」と訳した生徒に
「日本人はそんなことを言わない。月が綺麗ですね、とでもしておけ」
と言った、という話があります。
さすがは漱石先生、なんと浪漫ちっくな。

日本人は古くから、月がその時々に見せる姿にそれぞれに名前を付け、
どの月の美しさをも称えてきました。

この『月の名前』は、さまざまな月の名称、月にまつわる語句や詩、
そして写真を満載した素敵な本です。

この本を見ると、美しい呼び名の多いこと、バラエティに富んでいることは驚くほどで、わが国で月がいかに愛されてきたかがよくわかります。

たとえば、今の季節ならどんな呼び名があるのかいなと“四季の月の章”から“春の月”の項を見てみると、「朧月」「春月(そのまんまですが笑)」「薄月」「淡月」などが挙げられています。

では「朧月」とは何ぞやと見ますれば、
「おぼろにうるんだ情感豊かな春の月のこと」と説明があり、
「大原や蝶の出て舞ふ朧月(丈草)」の句が添えられ、さらに、満開の見事な桜の古木の上に月がまさしくおぼろに浮かんでいる、それはもう夢のように美しい写真がページいっぱいに載っているという具合。

おお、これぞまさに“I love you”!
もっとも、漱石のこの有名な逸話は出典も定かでない都市伝説なんだそうですね。んー、ちょっと残念。

でも。「今日の月はどんな名前かな?」とページをめくって見比べつつ夜空に浮かぶ月を眺め、たとえ想う人が隣に居なくとも、「月が綺麗ですね」とそっと呟いてみるのも悪くない、気がします。

今夜はお月見、いかがですか?