司書が司書に取材した⑥ 期待を倍返しするスタッフの巻――中央図書館開館15周年企画の裏側
ポンっと突然、企画は生まれるものではありません。貸出促進班の企画はアイデアや工夫、人との繋がりが交錯して生み出されているようです。
最初にこれまでの貸出促進班の展示や企画を振り返ってみたいと思います。15周年記念の“15”にちなんだ企画がずらり!
たった半年の間にヒット企画がたくさん。企画一つにも、着想から始まって企画検討、提案書作成、(展示をするには申請が必要)展示用品作成、展示本集め、全スタッフへの周知作業などなど、始まってから不具合が出ないように、安心安全にご利用いただけるように検討が必要です。(これまでの記事もぜひご覧ください)
段取りだけでも大変なのに、毎回見て楽しくて参加して笑顔になれる内容!…その楽しさに筆者も心が躍る一人ですが、プレス班の一員としては連続ヒットの秘密を探ってみたくなりました。
旅の出発地を図書館に
この秋、「行ったつもり⁉特集」展示が開催されています。展示スペースに青空が広がりました。青空の下には日本国内のみならず世界中の名所や観光地の本がずらり。小さなスペースですが視野いっぱいに旅の風景が広がる仕組みです。担当は新型コロナが終息したら自身も絶景を見に行きたいと話してくれました。
「絶景/グルメ/博物館と美術館/水族館と動物園/神社とお寺、と展示を分けています。気軽におでかけする場所というイメージです。この辺りは貸出カウンターの正面で人通りが多いので、面出し(本の表紙を表向きにして展示すること)すると映えて展示の特等席なのです。」なるほど。「15周年記念の展示なので、15年前の2006年以降に発行された本や雑誌を集めました。」このこだわりもすごい!ちょっとした懐かしさを感じることもできます。図書館ならではの品揃えでタイムスリップ効果もありますね。
あの一言や、この一言。
昨年は、コロナ禍による緊急事態宣言で稲城市内の図書館も休館になるなど大わらわでした。再開後にどのようなサービスを提供できるのか、図書館を支える多くのスタッフ、職員が共に頭を悩ませました。当時Go Toトラベル政策が大きな話題となっており、図書館内部でも「再開したら旅行関係の展示はどうか」と呟きがあったそうです。その一言がスタッフの耳に残り、今回の「行ったつもり」展示に繋がりました。世の中の動きに興味関心を持って、即時性のある展示に繋げる…長時間滞在が出来ない図書館で読んでみたい本に効率的に出会える…利用者と図書館がwin winの関係になるのですね!日々の会話やニュースやトレンドにも敏感に耳をそばだて、展示のアイデアに繋げるとは。先輩スタッフの頭の引き出しの中を覗いてみたくなります。
レファレンス対応からのヒントもあったそうです。ある時、「世界遺産について」の質問が続いたとか。図書館で受ける“点”としての質問ですが、同じものが続くということは何かの兆しなのでは⁉ これも引き出しへの貯金となりました。
そして恰好の時機に企画化するのが貸出促進班のすごいところ。日頃の蓄積が“連続ヒットの秘密”のひとつかな、と思いました。
倍返しの「きのこがり展示」スタート
お気付きの方もいるかもしれません。15周年記念企画初期の「いちごがり展示」の秋バージョンです。この展示が大盛況だったので、「秋だから、じゃあきのこは?」と最初は軽い発案だったそうです。しかしここで15周年記念プロジェクトのリーダーより告げられたのは「15周年ときのこ狩りは関係性が見つからない。」…なぜこの展示なのか、どう15周年に関係しているのか精査してから実行に移すようにとお達しがありました。実はリーダーもどう応えてくるかなと、期待感プラス挑むような気持で貸出促進班に聞き返したそうです。さて困った担当たち。「こじつけでも探さなくては…汗」
しばらくして見つけたのが「10月15日はきのこの日」だということ!(1995年日本特用林産振興会が制定)“15”が付いていたらこっちのもの。リーダーも驚いて「よく見つけてきたなぁ。この班はどうだどうだと投げても、それを倍返しで返してくるのでそれはすごい!」と漏らしていました。提案書が通ったら、貸出促進班のスタッフが立体化してあっという間に見た人が「わぁ♪」と喜ぶ展示になるのです。
諦めそうになる場面でも言い訳せず前に進んできた貸出促進班スタッフの粘り強さ…というか抜きんでて負けず嫌いなメンバー⁉これが秘密の2つ目だと思いました。
企画を最上級の形で持ってきてくれる貸出促進班、次は何を企てるのか…こっそり観察していますが、今日のところは淡々と通常業務に打ち込む姿しか見られません。今後も目が離せません!
(稲城市立中央図書館開館15周年記念事業 プレス班)