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図書館のゲームを作ってみるのはどうだろうか!


2022年7月28日、稲城市立図書館がRPG風ゲームになりました。
中央図書館の館内を再現し、回遊すると利用方法やイベント情報を知ることが出来るというもの。遊び心もたっぷり。

公開当初の紹介記事はこちらをご覧ください。  

今回は、その制作に至るまでと公開後のゲームの状況を紹介します。


図書館が開館できなくても

ゲーム上で図書館をめぐるものを作ってみよう、図書館を身近に感じてもらおう。

 2020年3月末、未知のウイルス急拡大を受けて、稲城市立図書館は全館休館となりました。資料を収集し、利用者と繋ぐ役割の図書館において、館にに利用者を集めることができない状況は図書館の仕事そのものに不安を感じる日々となりました。開館できなくても私たちになにかできることはないかと考える日々のことでした。

図書館のゲームを作ってみるのはどうだろうか?

 最初にこの案が出たときは、本とゲームは相反しているものと思い、すぐにはどのようなものになるのかイメージができませんでした。図書館がゲームの素材になり、一体どんなものが作れるというのか?と疑問に思いました。

  すでに作成されていた大学図書館のものを参考に実際にプレイしてみると、意外にも違和感なく楽しむことが出来ました。某大学図書館では新入生のオリエンテーションで用いているとのこと。なるほどと合点しました。
 
 ゲームは、テレビゲーム初期の頃のレトロ調なRPG風ゲームもの。手作り感あふれる図書館を知るきっかけになるかもしれないと開始することになりました。

 常日頃、私たちは図書館の利用者を増やし、本のたのしさを知って欲しいという想いがあります。読書離れが叫ばれ久しく、ネットやゲームの利用には時間をかけるのに、本を読むことに時間を使うことが少なくなっているというこの頃です。図書館はどう働きかけたら利用につながるのだろうと、時間があると話し合いを重ねていました。

 約2か月の休館を経て、2020年6月から通常開館を再開しましたが、利用者は以前よりずっと少なくなっている現実がありました。そして私たちはより「図書館を利用してもらい、本の楽しさを知ってもらいたい」という想いが強まっていきました。そのためには、なにより図書館へ足を運んでもらう必要がある。まず図書館の存在を知ってもらうことが大切で、図書館へ行ってみようと思ってもらえることが最初の一歩であり、ゲームがその役を担えるのではないかとの考えに至りました。

ゲーム作成に向けて始動

1.館内レイアウト

 早速、館内レイアウトを作成していきます。ゲーム好きのスタッフが面白がってサクサクと設定していきます。既存のツールを使っての制作のため、棚の向きがどうしても実際と異なってしまいます。棚の数も実際の図書館と同一にして、書架案内も網羅させたかったのですが、細部にこだわっていては進めません。一般書、児童書など大まかなコーナー配置を反映させたMAPになっています。

2.紹介したいサービス

 並行して、図書館のどんなサービスを紹介したいか、どんな会話があったら楽しいかをスタッフに考えてもらいました。自由に募ったので利用案内的なもの、資料やコーナーを紹介するもの、イベント案と様々で、集まったアイデアは全部で120点にも!整理するのが大変でしたが、できるだけ反映させ、自分たちのゲームだという意識をスタッフで共有したいと思いました。


スタッフ会議の様子
少人数に分かれて話し合い、発表します

 当初のアイデアは今見返してみてもとても参考になります。これから反映していけそうなヒントに溢れていました。今後の展開をお楽しみに!

3.主人公の年齢およびターゲット年齢

 次に、対象年齢やゲームの主人公の年齢について考えました。ちょうど同じ頃に市内小学校でタブレットが全校導入され、大きなヒントになりました。小学生に配られたタブレットを活用できたら子どもたちが楽しんでくれるのではないか、たとえ主人公が子どもでも大人なら違和感なくゲームできるのではないかということで、主人公は「小学3年生くらいの子ども」に決まりました。

※物語に影響しませんが、現在は好きなキャラクターを選べるようにしています。

当初からの主人公
実は小学3年生の設定です

4.キャラクター設定

 館内にいるキャラクターの数や役割をどうするかなど、細かく決めていく作業となりました。まずスタッフと利用者を区別させる必要があります。一目でわかるようにスタッフにはエプロンを着せたかったのですが、ゲームのデフォルトキャラクターで適当なものは見当たらず、とりあえず帽子をかぶっているキャラクターはスタッフ、ということにしました。(中には帽子をかぶった利用者キャラもありますが…)

 セリフは主にスタッフに考えてもらったものを元に作成しました。中には、話かけるとカウンターにワープしてしまうキャラクターなどもいて、初見は驚きますが、慣れてくると便利なキャラがいます。個性にあふれているのでいろいろ話しかけてみてくださいね。 

 児童向けブックリスト「よむゾウ」にちなみ「うま」や「ひつじ」や実際にあった鳥の来訪などから「にわとり」なども登場し、賑わいを演出しています。

天井の高い中央図書館には時に鳥も来館します。

 最近ではゲームの設定にも慣れてきて、オリジナルキャラクターが登場しています。中央図書館15周年で生み出された頭が本のキャラクター、「本’s」?「ブックン」?まだ名前の定まらないキャラがいます。こちらもどういうキャラになるのか楽しみです。

5.ゲームの名称

 最後に、大切なゲームの名前をどうするか…。しばらくは(仮タイトル)「図書館クエスト」と呼んでいました。なかなかいい案がでない中、冗談めかして「おいでよ」は?と。どこかで聞いたことがあるような…?でも悪くない。なにより来館して欲しいという希望をこめて呼びかけるネーミング。色々な呼び名を経て、今のタイトル「おいでよ  稲城市立図書館」に決まりました。名前はフィットするまで少し時間がかかります。「OIT」と略したりして、今ではすっかり落ち着きました。


名前案のメモ 
壮大な候補もありましたが、ストレートに呼びかけることにしました。

 

2022年7月28日リリース

 ゲームの形が一応整い、テストプレイを経て、いよいよリリースします。夏休みに合わせたい思いがあり、少し遅れましたが急ピッチで仕上げました。構想期間はそれなりにあったのですが、実際に手を動かしたのは3か月弱程度。Ver.1はバグも多く、クリアのない館内を周遊するだけのゲームでしたが、リリース後じわじわと反応が寄せられました。

 特に目立ったのは、2学期に入り小学校の図書館見学で来館した子どもで、「ゲームで見た!本当にあるんだ!」と感激する姿がありました。微笑ましく、スタッフで共有しターゲットは間違えていなかったと嬉しくなりました。また、大人の方でも興味をもって話かけてくださったり、SNSで感想を寄せてくだる方々の声もあり、とても励みになっています。

クリアがあります!

  その後バージョンアップを重ね、ストーリーも変化しています。ゲームの世界を周遊する終わりのないゲームでしたが、いまはクリアがあります!館内に潜むモンスターを順番に6体倒す(=注意してクイズに正解する)と、知らぬ間に図書館マスターとなっているのです。1体倒すと「次のモンスターは〇〇で君を待っているぞ」と居場所を教えてくれます。

モンスターを倒すと、次のモンスターのいる場所を教えてくれる

 次のモンスターの居場所をお知らせしては簡単すぎ?とも思いましたが、なかなか難易度のあることのようです。ぜひモンスターを探しながら図書館内を周遊していただき、クイズに挑戦してください。

モンスターは6体 

 ・「大声こうもり」
 ・「本ぬらしスライム」
 ・「本の返却おくれ魔」
 ・「本破いちゃウシ」
 ・「ケータイスマホ使い」
 ・「ライブラリドラゴン」

 ラスボスの「ライブラリドラゴン」のクイズに正解すると、ちょっと感動的です。華やかなファンファーレで祝福され、「ぼうけんしてくれてありがとう」とエンドロールが流れます。皆さんもぜひクリアして、この達成感を味わってみてください。

最後の強敵ライブラリドラゴン
クリアで流れるエンドロール
気持ちいいです。

Ver.3のその先へ

 「おいでよ 稲城市立図書館」もリリースして1年が経とうとしています。現在はVer.3となり、2023年6月16日に迎えた稲城市立図書館開館50周年を記念して、開館当初の稲城市立図書館(現・第一図書館)も加わりました。ゲームだからこそできる方法で図書館の長い歴史を振り返ります。

 利用案内ゲームとしての要素はそのままに細かいバージョンアップを繰り返している状況です。これからはゲームとリアルな図書館をつなげていくことを念頭にして更新を続けています。

 図書館は資料や人を通して様々な世界とつながっています。ぜひゲームをきっかけにして実際の図書館にも興味を持っていただければと思います。図書館はどなたでもご利用いただけます。コロナ休館以降も展示コーナーを増やし、実際に館内を見てまわって頂けるようにさまざまな特集展示やイベントも企画してお待ちしています。

さぁ、おいでよ稲城市立図書館!!



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