司書が司書に取材した⑬~本丸のプロジェクトリーダーにインタビュー!――中央図書館開館15周年企画を振り返る
2021年7月1日に稲城市立中央図書館は開館15周年を迎え、記念企画をこの春まで展開していました。
ご来館の皆様、イベントに参加された皆様、SNSを通じて楽しんでいただいた皆様や応援してくださった皆様、そして携わった図書館スタッフや支えてくださった方々。note記事で振り返ると、企画とともにたくさんの方の表情が浮かびます。
図書館の中の人にとっては、初めての取組みに戸惑いや不安の声もありましたが、過ぎてしまえば「この企画が無かったら日々もっと平坦に過ぎていたのかな」とも思われます。中にいる側にとっても、いつもと違う図書館を感じられた一年でした。
そして16周年を迎えた2022年7月、この企画の本丸であるプロジェクトリーダーにインタビューをしました。(関連記事をマガジンにしておりますのでご覧ください↓)
きっかけと構想
ーー今日はプロジェクトリーダーに企画全体の裏側を伺わせていただきたいと思っています。
プレス班(以下「プレス」) よろしくお願いします。
プロジェクトリーダー(以下「PL」) よろしくお願いします。
ーーこの企画はいつ頃から考えていたのですか?
PL 前年(2020年)の夏、と言うのも、次年度計画を立てる時期だからです。2021年に中央図書館が開館15周年を迎えることが分かっていたので、その計画の中で前振りをしていました。
ーー構想のきっかけを聞かせてください。
PL 2016年の10周年ではノベルティ(記念エコバック)を配布したり、記念講演会が好評でした。それを踏まえて15周年ではより大々的なものにしたいというイメージがありました。市民の方、利用者の方に中央図書館の15年を振り返っていただくことで図書館のPRとするだけではなく、ご自身の15年を追体験できる時間や場所を共有したかったのです。
ーー記念企画の発表と同時に、4つの班編成やそれぞれの目的が発表されて…
PL どの班に入るかは挙手制で、回答期限まで2~3日だったんです(笑)
プレス (笑)
PL 周年事業として果たしたい目的がいくつかあったので、目的別の班編成を提案しました。主担当業務(一般・児童など)以外の班で活動することで、職場環境や図書館活動自体の活性化を期待したのです。(企画を)思っちゃったんだから仕方ない…!提案から開館記念日まで3か月。スタッフはとても大変だったと思います。やりながら考える。でも、少し前からスタッフによる図書館への取り組みを見ていて「やれる」と確信していました。
プレス 私はこの年の春に配属されて、それと同時にプレス班スタッフに入ることになったのですが、この図書館ってどんどんいろんな事をやるんだ、皆さん特技を発揮していて凄いな、と。アイデアを即実行して形にしていくスピード感にびっくりしました。
プレス班として掲示物や年表制作に関わったことで、中央図書館の生い立ちを知る良い機会にもなりました。
ーー担当が異なるスタッフと組んだこと、未経験のこと、元々図書館業務には無いことを進めるのは不安もありましたが、良い経験になりました。企画の一つ一つが形になる様子に感動しました。
PL 今回のように全体で一つのことに取り組んだのはおそらく初めてです。
プレス そうなのですね。
PL もちろんこれまでも個々の能力を発揮する場はあったけれど、ここまで一つに結集する企画は無かったと思います。それも裏テーマのひとつでした。
各班の活動とご利用の方々からの反応
ーー各班の活動を見て感じたことは?
PL まず貸出促進班。想定以上に「スナイパー」でした。業務経験が活かせる流れでしたし、立ち上がりも早く、展示など数多く展開してくれました。手ごたえを感じる毎にグレードアップしていった印象です。反響も良かったですね。
次にイベント班は、イベント企画自体初めてのスタッフも多かった。準備を丁寧に慎重に進めていた印象があります。準備をしっかりするほど想いが溜まってそれが本番に繋がったのではないでしょうか。ビブリオバトルも講演会も想定以上の内容と盛り上がりを見せて、後に続く繋がりを持てたと思います。
次のノベルティ班は、今回だけではなく長く図書館の記念品になり得る大きな仕事をしてくれました。ノベルティ品の種類、デザイン、個数など検討事項がたくさん。7月1日の開館記念日に間に合わせるというスケジュールのタイトさもありました。累計貸出冊数によってノベルティを贈る企画、イベントの中での配布、どの場面でもとても喜ばれました。スタッフに向けてひばりマーク入りのマスクを用意してくれたのも嬉しかった。
最後のプレス班はこの事業を強力に下支えしてくれました。予想以上の取材量でnoteが主戦場となりました。ひとつひとつを記事にして残した結果は、記録としても後世に残ります。
ーー開館記念日(7月1日)に近い7月4日には、華やかな式典が図書館の隣の城山体験学習館で開かれました。いかがでしたか?
PL 髙橋市長をはじめ稲城市の方々、関連事業者も集まった場となったことが印象的でした。式典については図書館課職員とも連携して実現したという観点でも、理想に一番近いイベントになりました。そして大きな事がもう一つ。「読書チャンプ」(※読書通帳の発行累計が9冊となった方が2名いらっしゃいました。)の表彰式を行い、市長により表彰状を渡していただけた事です。式典に市民の方を招待出来た事はとても嬉しかったです。
ーー小学生の受賞者とご両親が来場されて。晴れやかな表情をされていたのが印象的でした。たくさんの企画や展示が行われましたが、印象に残っているものはありますか?
PL 8月に開催した「1500グラムチャレンジ」です。企画自体は貸出促進班主催だったものの、館内ポスターやSNSでの告知が一切出来ない状況下で、あれだけ喜んでもらえたのは、班のスタッフはもちろん、カウンタースタッフ全員の成果だと感じたからです。それから、ノベルティ班による輪投げやゴム鉄砲のイベント。児童サービスの中では感じられない手ごたえもあったのではないでしょうか。それがこの後の企画にも繋がるようで、大きな収穫です。
ーーその他、利用者の方々の反響で嬉しかったエピソードはありますか?
PL 「もう15年になるんですね」など、自身の利用と合わせて振り返る様子や、累計貸出数に応じたプレゼントがとても喜ばれました。他にもここでは挙げきれないくらいたくさんあります。その頃から図書館の各種SNSのフォロワーも増えて、この6月にはTwitterのフォロワーが1000人を超えました。この図書館が本を借りるだけではない、街の「居場所」の一つとして、より身近な存在と捉えていただけているのがうれしい変化の一つです。
15周年を経て
ーー記念事業が残したもの…レガシーがあれば教えてください。
PL スタッフがこの記念事業ありきで動いてくれたこと(動かざるを得なかった?)です。この経験が当館の内外にとって大きなものとなったと思っています。一回ハードルを越えたので。これを踏まえて原点に戻って。図書館って何だろう、図書館員って何なのかと考えながら動いていけると良いですね。
取り掛かるスタッフは本当に大変だったと思います。でもこれをやらなかったからと言って業務がもっと捗ったかと言えば必ずしもそうではない。大変だった分、スタッフの引き出しは間違いなく増えました。一人残らずです。
ーー当初は2021年中に終わる予定でしたが、年を超えて春まで企画が続きましたね。これが全ての答えですね。
PL それは皆でやったから。今後は今回のことを礎にしていくことになります。2026年の20周年に向けては、常に別の景色を見ることができると思います。芯は出来たと感じています!きっと、ご利用の皆様に喜んでいただけると思います。
ーー盛り上がる中、ご自身でも何かやりたくなった事は?
PL …無いです。というと語弊がありますが、やりたいことは全部提案しましたので。内輪な話ですが、スタッフ全体で取り掛かることに意味があると思っていました。「やりましょう!」と言った時点で役割は果たしました。投げた球をどう打ち返してくるか。そこに期待したかったですし、その結果はここまでお話した通りです。
プレス 記念企画の終了後、やってみたいことはありますか?
PL 「図書館フェス」のようなものをやってみたいです。本を中心に据えつつ、参加型や応援企画などいろいろな角度から図書館を楽しんでいただけるお祭りのようなイベントを開催したいです。これは開館15周年記念事業を開催したことで、スタッフからも声が挙がっています。
来年2023年6月、稲城市立図書館は開館50周年を迎えます(※1973年6月16日に、現在の稲城市立第一図書館が開館しました)。ご時世としても同時多発的なイベントはしばらくできていないですし、そもそも図書館は本だけで世界のあらゆることを網羅しているような雑多な場所だと思いますので。…いつもこんな事を考えたりしています。
(稲城市立中央図書館開館15周年記念事業 プレス班)